#4_目指したのは柵のない公園。広がり続ける人とモノのクリエイティブネットワーク
インテリアのプロダクトデザインのみならず、空間デザインやさらに大阪の地でのコミュニティづくりなど、「暮らし」に関わる他種多様なクリエイティブ活動をされているgrafさん。その広いモノづくり視点でのお話を伺いました。
【プロフィール】
松井 貴(Tatakashi Matsui) / graf取締役、プロダクトデザイナー。1970年生まれ、大阪府出身。実家が下町の商店街で靴屋を営んでおり、父親は靴職人という環境で育つ。専門学校卒業後、建築設計事務所にて勤務、インテリアショップにてアンティーク家具のリペアを担当した後、1998年に友人たちとgrafの活動をスタート。家具やプロダクトを中心としたデザインを担当している。
graf HP:www.graf-d3.com
「暮らし」の専門家たちが生み出す、総合芸術集団
-garfさんの活動内容を拝見すると、家具はもちろん、グラフィックやマルシェまで!とにかく活動領域が広いことに驚きます!領域を限定せず様々なデザインを手掛けてらっしゃることについて教えていただけますか?
まずは簡単なプロフィールですが、grafを立ち上げたのが僕が26歳の時、今は50歳なので、24年前になります。
元々家具屋のアルバイトで知り合った人メンバー6人で立ち上げました。ひと時同じアルバイトをしていた仲間で、約3年越しに再会した際には見事に皆バラバラの事をしていました。家具や、アート関係、広告代理店や建築事務所で設計していたり、アーティスト、イタリアンシェフだったり。
-シェフですか!見事にバラバラな職種ですね!
そうなんです(笑)。当時はちょうどバブルがはじけた頃だったので、どうせなら面白い仕事をしようよ、という気持ちがありましたし、アルバイト時代に言っていた「暮らしにまつわるエトセトラ」がやれたらいいよね、という想いは皆変わらず持っていました。
現在領域にこだわらずにやっている理由は、設立当初からこういうメンバーだったからですね。家具屋からスタートしたのは、アルバイト時代にヨーロッパでアンティーク家具を仕入れてリペアをしていたから。それと「家具とモノづくりが好き」、という共通項ですね。
-grafさんのデザイン領域は設立メンバーの得意専門分野からごく自然にスタートしたんですね!
僕らが考える「暮らしにまつわるエトセトラ」 って、衣食住だけでなくアートも音楽も含まれているんです。あらゆる状況でビジュアルや音や匂いや、たくさんの要素がそこにあって、その時間・空間にあるすべての要素で成り立っている総合芸術みたいな感じです。
-そこにある全ては空間で繋がっていますし、表現のアウトプットは止めどなく広がりますね。
そうですね。「暮らし」って自分のまとっているモノ全てがチョイスして繋がっています。なのでどれかひとつで表現というより、全部で何かを表現したいという思いがあって、興味がありました。
-暮らしの衣食住についてですが、食にとても興味あっても、衣住には興味ない人もいる。その逆も人もいますよね。設立メンバーはどうでしたか。
そうですね。延長線上には繋がっているはずなんですが、そういう場合もありますね。そういう意味では、設立メンバー6人は、飛びぬけている得意分野はあるけど、それだけでは無く多方面にバランスの良い人たちですね。
-全方位型だからこそアウトプットも多岐なんですね。実は販促の仕事は、多趣味歓迎!というくらい多種多様なジャンルを扱う仕事なので、自分の感度や興味が色々な施策のアウトプットに繋がります。モノづくりの企画には共通するモノがあるなと感じました。
多様なプロフェッショナルがいるという意味で、grafは『柵のない公園』を目指してましたね。どの方向からも出入り自由、たまり場、遊び場、みたいなコミュニティとかシェアとか、プラットフォームとか、何か始める前にとりあえず集まれる場所。
-その考え方は、いまでこそ市民権を得ていますが、昔はもっと仕事はカテゴライズすることに重点を置いていた社会だったと思います。柔軟なクリエイティブ活動の先駆けですね!
仕事の入り方って色々です。例えばレストランの顧客の元の依頼が店舗デザインでも、その背景には課題がありますから、グラフィックもフードメニュー開発もできます!となればどんどん仕事の幅が広がっていくんです。お客様にとっては窓口ひとつで相談ごとが済むから手間も軽減されますよね。
-なるほど、トンマナも全部合いますしね!普通のグラフィック会社だと、設計まで繋がらず切り分けられますが、grafさんでは全て統一された空間の心地よさや、フォトジェニックさもトータルで作り上げられますね!
オシャレなインテリアが揃うgraf studio(1F: Shop&Kitchen / 2F: Office)(大阪・中之島)
-点じゃなくて面で捉えたデザインがgrafさんの特徴ですね。
仕事のメインは家具屋なので、その設計、製作、販売はもちろんできますけど、ここに来たら何も買わなくても体験して、何か気づきやアイディアの種を持って帰れるみたいな場所にしたくて。空いてるときに使ってもらうなど、またシェアしてもらうとか、そういう場にしたかったんです。
前の社屋は5階建てビルで、1階工場で、2階オフィス、3階ショップ、4階カフェレストラン、5階ギャラリーだったんですよ。
-企画・製造・販売までノンストップですね!すごく先進的です。今でこそ、「体験」キーワードでの施策がいろいろありますが。そいういったコンセプト店舗の先駆けです!
情緒的側面と機能的側面のリズムとバランス
-ようやく時代が個人の感動体験に重点を置いた施設が増えてきたと思うのですが、最近のお仕事では何か変化など感じますか。
そうですねぇ、この前中小企業の商品開発支援案件で、プロジェクトに関わらせていただきました。
そこにはヨーロッパのデザイナーの方が参加されていらっしゃったんですが、「ナチュラル」というワードを頻繁におっしゃってました。
―ナチュラル、というと?
とにかく自然なもの。「ケミカル」は一切ダメ、有害なものを含む塗料はNGなど。
私たちの業界では塗料や接着剤など使いますし、まだそこまで徹底的には言われていないのですが、その方々にはもっと身近なニュースとしてマイクロプラスチックや大気汚染の問題があるようです。生活に切っても切れない問題。
世界の考え方に触れて、さらに子どもたちや将来の人たちのことを考えると、モノづくりをする人間としては環境に対するモノづくりについて考えさせられました。
―日本でも対環境に対する意識改革や取組が活性化してきましたよね。
そうですね。僕には10歳になる子どもがいるのですが、去年の夏休みの自由研究は「マイクロプラスチック」でした。海岸で1㎡内にどれくらい含まれているか調べていました。すると結構家の近くでごく普通に見つかったんですよ。日本でも身近で、世界中で起きている課題なんだと実感しましたね。子どもの自由研究の中で勉強になりました(笑)。
生活の中のそういう体験が、自分の仕事にも影響を与えてくれますね。
道具と人の関わりによって生まれたモノは、感動の連鎖を生み出す。
―モノ作りにおいての課題は、日常にも落ちていますよね。松井さんが感じてる課題や注目していること、ありますか?
注目…というか、ITの技術がどんどん進化してるじゃないないですか?AIやIoTなど。興味がもちろんあるし、使い方さえ間違えなければ、とても便利。
ただ使い方を間違えると、色んなことが怠慢になるのでは?というのは怖いですね。
僕は「道具」が好きです。
道具は人と関わることで、とてもおいしいものや使いやすいものを作ったり、人が加わることでスキルにもなったり、とてもクリエイティブだなって思うんです。
それを人が受け取り、感動する、という連鎖がめっちゃいい!
その人間臭さが良くてとても好きなんです。人とモノの関係はそれだと思う。
そういう体験を自分もしているから、モノづくりを通して感動の連鎖を生み出す側になりたいですね。
―ITの技術も、道具として捉えられているんですね。生活を豊かにする反面、やり過ぎの場合もありますね。
モノには、機能的側面と、情緒的側面が必要です。
いかついか、かわいいかなど形状の印象も色々あって、色も大きさも全て違う。
モノが持つ美しさを引き出しているのか、リズムがあるかなど感情にうったえる要素もどれも必要で、機能的な側面だけでは成り立ちません。
―いいモノって心地よさの連鎖がありますね。特に長い時代の中で残っている道具にはその要素が含まれているのかもしれませんね。お箸とか何百年も使っているモノでも、デザインにまだ伸びしろがあったんだ!と思うことがあります。
-ノベルティというモノについて伺ってもいいですか。松井さんは日ごろキャンペーンに参したり、ノベルティを手にする機会ってありますか?
今はなかなか無いかも(笑)。
でも 撲が小さいとき、スーパーでボトルに首掛けされていたモノがあったのを覚えています。コカ・コーラのスターウォーズのシリーズだったかと。
昔は栓抜きで抜くコカ・コーラで、キャップ裏のコルクを針で抜くとめくったところにスターウォーズのキャラが印刷されてました。それを貼るシートがお店でもらえて、集めて送るとR2D2のラジカセがもらえるんです。
3段階くらいで送って買わせるモノがありましたね。結構ハマって集めていました。
-我々のやっている、ノベルティやキャンペーンの目的って、「認知」や「もっと買ってね」「好きでいてね」、という施策の流れがあって、まさにそれを説明しやすいいい事例ですね!ターゲットの心を動かすモノで、知ってもらったり選んでもらったり、購入してもらったりと、行動も動かしていきます!
-では最後に、grafさんの今後のチャレンジなどお聞かせいただけますか。
メンバーの入れ替わりがありますが、独立して始めたい人もいたり、OBともつながっていたりしていて、やめて終わりではなく所属が違っても情報交換したり工場をシェアしたりと一緒に仕事ができる環境があります。
多様性の窓口もあり、お互いの持ち味もあり。それが相乗効果を生み出す。お互いにとってメリットがあるからこの環境を続けていきたいと思います。
工場ででた「木っ端」をミカン箱に入れて並べている。見事に無くなるそう。
grafさんと我々ではモノづくりのアウトプットは違いますが、「人を感動させるモノの力に惚れてモノづくりの仕事をしている」という共通点を感じました。とても興味深いお話をお伺いできました。
地域にも開けてシェアされていて、人のつながるところにgrafさんがある、というのはとても自然な形に思えました。
人と人の出会いがある限り広がり続けるgrafさんの多様性。これからもたくさんのモノがたりが生まれそうです!!
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Writing by Kashiwa
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