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#3_紙と印刷の奥深さを実感!ものづくり界隈がザワついた「効果のある/なしの境界線」展に込められた想いとは

先日まで東京は茅場町のペーパーボイス東京で「効果のある/なしの境界線」という企画展が開催されていたのをご存知でしょうか。1月14~18日のわずか5日間の開催だったにも関わらず、SNSで話題となり、500人という目標に対し1,500人もの来場者数を記録しました。

この企画展は平和紙業株式会社という紙の会社と藤原印刷株式会社という印刷の会社が手を組み、よく使う組み合わせなのに効果のある/なしがはっきりしない紙とオフセット印刷で4つのテーマを設け、それぞれのテーマに対して様々なファンシーペーパーを用意、その効果を検証するという内容でした。しかも実際に印刷された紙見本を全て持って帰れるという豪華なお土産付き!これはMonoLaboとしても行かないわけにはいきません。

実際に行ってみると、紙と印刷の奥深さ、面白さ、そして作り手の想いがビシビシ伝わってくる最高の展示でした。このアツさ、少しでも多くの人に伝えたい!!

というわけで主催者である藤原印刷の藤原章次さんへのインタビューと共に「効果のある/なしの境界線」展のレポートをお届けします。

今回の企画を担当した3名。左からアートディレクションを担当したセプテンバーカウボーイの吉岡さん、お話をお伺いした藤原印刷の藤原さん、平和紙業の西谷さんです。

【プロフィール】
藤原 章次(Fujihara Akitsugu)
1984年生まれ。藤原印刷の後継者。モットーは企業理念の「心刷」。専門学校桑沢デザイン研究所 非常勤講師。
シゴトヒト文庫、n magazine、NORAH、隙ある風景、など独立系の書籍や作品集を数多く担当。PTBS(PRINTING TELLER  BOOK SERVICE)という、独立系自費出版で自社で印刷した本を、イベントで販売する印刷会社の本屋サービスを2018年から開始


紙と印刷の「あるある」を本気で検証

「効果のある/なしの境界線」展は印刷の現場でよく直面する「なんでこうなるの!?」と思わず言いたくなる4つのテーマ、「残念な金」「残念な白」「びみょうなニス」「謎の奥行」で構成されていました。

会場写真

コンパクトな展示スペースながら充実した内容

2枚の用紙で刷り分けされた企画展のフライヤーもおしゃれです。

「金インキを使って刷ったのに黄土色になった」、「黒い紙に白インキを刷ったらグレーになった」など、日々ものづくりの仕事をしている私たちもよく出くわします。そんな「印刷あるある」を本気で検証したのがこの展覧会。「紙と印刷の本業がタッグを組んで、多種多様な実験をし、更にそれを来場者の方が持ち帰れることがポイントです。」と藤原さんは教えてくれました。

金で印刷をしたことある人ならば誰でも直面する「印刷あるある」

ー今回の企画展の開催に至った想いを教えてください。

紙と印刷の魅力を業界内だけではなく、一人でも多くの方に知って欲しいと思ったからです。
紙の展示会というと、デザインされたポスターなどの印刷物が展示される方法が多いのですが、紙のサンプルを来場者の方にプレゼントして、実際に印刷物をつくる際に参考にして頂きたいという思いが今回の企画展の開催に至りました。

冒頭にも書いたようにこの企画展が画期的なのは様々な紙に印刷された見本を全種類持って帰ることができるという点です。印刷は言葉や写真ではなかなか伝えづらく、実物を見なければ分からないもの。だからこそ見本を手元に置いておけるのは本当にありがたい!さすが印刷と紙のプロが企画しているだけあって、何があると嬉しいかよく分かっています。

印刷見本

全46枚もの印刷見本が全て持ち帰りできます

ー展示をするうえで苦労した点があれば教えてください。

なんと言っても展示する印刷物の種類が40種類以上あったので、印刷現場のオペーレーターには相当苦労をかけました。

ーこの種類の刷り分けは気が遠くなりますね…。ここにいたるまでに他のパターンの印刷も色々試されたのでしょうか?

他のパターンも試しましたが、90%以上は本番と同じ仕様です。数種類だけ試し刷りから紙を変更しました。

ーある程度、この紙でやったら面白いという目星が付いていたんですね。それも印刷と紙のプロでないと出来ないことだと思います。

用紙が置いてある台には自由に書き込みができるようになっており、他の来場者の視点が楽しめるのも嬉しい(写真は初日のためまだ書き込みは少なめ)

 

境界線は自分で決めてよい

ー紙と印刷の魅力を伝えたいというアツい想いが感じられる一方で、マニア向けの内容だなとも感じるのですが、この展示の楽しみ方を教えてください。

同じ印刷機・同じインキで印刷しても、紙によって印象が変わります。何が正解で何が不正解かではなく、見本を見て楽しみながら、ご自身で効果のある/なしの境界線を決めて頂ければ幸いです。

そう、この企画展には何か答えが用意されているわけではありません。実際の印刷見本を見て、自分自身が感じたことが答えになるのです。

写真だと違いがよく分からないのが残念

例えば金インキでの印刷は紙によって色の見え方や光沢が変わってきます。紙のことが全く分からなくても、「この紙はアリだけどこの紙はナシだなー」と勝手に思うだけでそれが答えになるというわけです。もっと言えば「紙によってこんなに違いが出るんだ」と分かるだけでも、今後の身の回りの紙や印刷を見る視点が変わってくるのではないでしょうか。

白インキはさらに気合が入っています。

黒い紙への白インキ印刷は紙種9種に加え、油性インキとUVインキの2パターンで刷り分けています。(各種右側がUVインキ印刷)

同じ黒い紙でもこんなに違う!

ー今回の企画展で一番見てほしい!!という用紙・印刷があれば教えてください。

やっぱりテーマ「奥行」を見て欲しいです。紙に白インキで印刷してグロスPP加工をするだけで、本当に謎の奥行を感じられるので。

藤原さんイチオシの「奥行」。写真だとよく分からなすぎる…

印刷テクニックで不思議な奥行がでます。この加工法は知りませんでした。

頑張っても写真では伝えられない気がするので、こうやると謎の奥行が出るってことだけでも覚えて帰ってください。

 

想いの量で品質は変わる

最後に、紙と印刷に対する藤原さんの想いについても伺いました。

ー藤原さんにとってモノ(≒紙と印刷)とはなんですか?

紙に印刷することは、作り手の想いを形として表現できる最高の手段だと思います。

ー展示を見て本当にそうだなと感じました。販促品(ノベルティ)における紙・印刷については何か思うことがありますか?

アパレルブランドのカタログで、実際に使われて余ったニットを表紙に付けて完成させたことがあります。これからは、紙と異素材のコラボも大事になってくると思います。タオル生地や洋服の生地そのものを紙の販促物につけると、ブランドイメージを更に強く伝えることができるのではないでしょうか。

ーそれこそ用紙の種類や印刷方法を工夫することで、紙はどんな素材とも合わせられますよね。とかく印刷は価格の安さで比べられがちですが、そうではなくて紙によってどんな付加価値が付けられるのかという視点を私たちも大切にしていきたいと思います。

最後に、これからやりたいことや次回展示の構想があれば教えてください。

まだまだ「印刷あるある」はありますので、第二弾、第三弾と「印刷あるある」が実感できる”効果のある/なしの境界線”を展示して、作り手の方がより満足する印刷物が増えたら良いなと思います。

印刷とは、老若男女・どんな業種・どんな職種の方とも仕事ができる可能性があります。その可能性を最大限に活かすことが大切で、金額の大小、知名度の有無など関係なく、どれだけ印刷物に対して想いがこもっているかで完成する品質は違ってくると思います。これからも藤原印刷は手に取った方が感動する作品をつくり続けていきます。


 

藤原さんに話をうかがい、さらに紙と印刷に対する情熱を感じることができました。

今回の企画展の成功をきっかけに、紙や印刷の価値が多くの人に伝わり、ひいてはその価値が少しでも上がっていると良いなと思います。少なくとも私は紙や印刷の価値を見直す良いきっかけになりました。

藤原印刷と平和紙業の取り組みにこれからも注目です。

 

Writing by Imaizumi

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